【管弦楽】ラロ:歌劇「イスの王様」序曲

高校を卒業してからのこと、吹奏楽部の同期の男連中でI君の家に遊びに行った。各々お気に入りのLPレコードや秘蔵のエアチェック(ラジオで放送された音楽をチェックすること、更にはそれが録音された媒体も)、それにお菓子を持ち寄り、わたしとF君だけはI君のご両親用に菓子折りも持って行き、大ダビング大会が催された。I君のお父さんは録音技師だか何かで、彼の家にはオープンリールからドルビーCまで、プロ仕様の機器が揃っていたのだ。わたしはパチンコでとった景品の"グレードの高い"カセットテープを持って行って、希望の曲を誰かのLPからダビングしてもらった。それにいっしょに入っていた曲がこれだった。

衝撃だった。初恋以上、いや、その時の片思いを更に苦しくさせるぐらいの魅惑の旋律に、もうどうしようもなくなってしまった。

あれから30数年経つが、この旋律(数えると、第二主題にあたる)を聴くと、未だに胸がキュンと締め付けられるような感覚に襲われる。今回のスライドショーでは、そこの部分だけは結構的確に再現できたように思う。

今の希望は、自分の葬式には坊さんの読経ではなく、出棺までこのメロディだけを流し続けること。焼香も臭いからいいや。さて、そういうことできるのかな?

演奏は、わたしのこの曲のコレクション5CD1LPの中から、これがいちばん胸が苦しくなるフルネのものを用意した。絵は海に馬のものが、エヴァリスト・ヴィタール・リュミネ作「娘を捨てよと王に求める聖ゲノル」、第二主題のときのわたしのイメージを表現したものが、ウィリアム・アドルフ・ブグローの「ニンフとサデュロス」の二種類のみ。なぜ聖ゲノルが王様に「娘を捨てよ」と叫ぶのか、それは動画の下に・・・。

※イスの伝説(ウィキペディアから転載、ほんの一部だけ修正)

5世紀頃、ブルターニュのコルヌアイユという国に、グラドロン (Gradron) という王がいた。王にはダユー (Dahut, Dahud) という美貌の一人娘がいてこれを溺愛していた。グラドロンは聖コランタン (Corentin) と出会ったのをきっかけにキリスト教に改宗し、国にキリスト教を広めていったが、ダユーはそのことを忌々しく思っていた。耐えかねたダユーはグラドロンに自分のための新都造営を懇願した。娘を溺愛するグラドロンはその願いを聞き入れ、海のそばにイスが建造されることになった。間もなく洪水から都を守るために水門も建造された。

イスの支配者となったダユーは、妖精の力を借りて海行く船から略奪を繰り返した。その富でイスはみるみる間に栄えたが、一方で人々は享楽に溺れ、背徳のはびこる都となっていった。事態を憂慮したコランタンは聖ゲノル (Gwenole, Guenole) にイスの人々を改悛させるよう要請するが、人々は誰もゲノルの言葉に耳を傾けようとしなかった。

イスにはダユーに求婚する貴公子が多く訪れた。ダユーは気に入った貴公子を誘惑しては一夜をともにしたが、飽きると殺して海に捨てていた。そんなある日、ダユーの前に赤ずくめの貴公子が現れる。彼は逆にダユーを巧みに誘惑し、イスを守る水門の鍵を奪い取った。赤い貴公子の正体は悪魔だった。悪魔により水門が開けられると洪水が押し寄せ、イスはダユーとともに水没してしまった。

水没したものの、今でもイスは海の底に地上にあった頃と変わらぬ姿で存在し、いつの日か復活してパリに引けを取らない姿を現すと言われている。



演奏者情報は下記URLをクリックしてお読みください。

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https://youtu.be/kBIGd999OIc


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